2019年12月31日火曜日

2019年の終わりに

2019年が終わろうとしています。今年のライブは全て終わり今週は演奏がないので、久しぶりにブログを書いています。

2019年も前年に引き続き、一人でいろんな場所で、いろんな人の中で演奏をしました。特に最近はテクノロジーが進み、人々がコンピューター、携帯の画面を見て毎日生活する中で、また自分もその波に飲み込まれそうになりつつも、ただそれはやはり不自然に思える自分もいて、せめて自分に出来るのはライブをすることだと思い、またライブならではの生の音、音の振動は他に代替の利かない部分もあるのではと思い、今の人達にそのライブならではの良さを少しでも感じてもらえればと信じてやってきました。

様々な場所に行き、色んな人を見て思うことは、みんなそれぞれ違う、でもみんな結局よく似たものということです。

1月から12月まででそれぞれ思い出に残っていることを振り返ってみました。


1月:
年の始めの寒い時期にニューヨーク州北部のフィンガーレイクスと言われる、更に寒さの厳しい地方へ。どこも凍りついていて春まで溶けることのないであろう氷と雪に覆われていましたが、そんな中熱心なオーディエンスが足を運んでくれ暖かいライブに。来月も一年振りにまたこのエリアに戻ることになりました。




2月:
寒い北部からしばし逃れフロリダへ。アメリカ人が寒い時期にフロリダに行くのがよくわかりました。このツアーでは同じ州でも良い印象の町、そうでもない町両方混じったツアーでした。こういう波止場があれば歩きたくなるのはみんな同じでしょうか。海を見てみんな何を思い出して考えるのでしょうか。




3月:
アメリカの中でも時が止まっているような場所も多く、このテネシー州リバティーもそんな町のひとつ。ナッシュビルからそこまで遠くない場所ですが、少し内陸に入るとこのような静まりかえっている場所があります。そんな所に着くとまず車をとめて歩きます。歩くことで車窓からは見えなかった人々の暮らしが垣間見れる気がします。ここで演奏する場所は、かつての線路の枕木を壁に使った空間で、音の響きが最高でした。





4月: 
ミシガン州でギターメーカーのBryan Galloup(写真右)が自分のライブを企画してくれました。Bryanは最先端の技術を導入しながらアコースティックギターを長年製作している人で、ライブの翌日工場を見せてもらいその研究の深さに驚きました。また彼はミシガンにてギター職人を育てるギター製作スクールを経営もしていて、その中から育った素晴らしい若手製作家、Tylor Robbins(写真左)のギターも弾かせてもらいました。



5月:
アメリカ西海岸のオレゴン州へ。オレゴンの太平洋岸はなんとも霞んでいて少し暗い感じで独特の雰囲気があります。湿気ているため植生も面白く深い緑が永遠と広がるように思える海岸線が続いていました。




6月:
メイン州のレコーディングスタジオにオーディエンスを招き、レコーディングしました。いつものレコーディングのようにマイクを立てて設定しましたが、その向こう側にお客さんがいるという今までやったことのない形の録音でしたが、やり直しがきかないというチャレンジングな反面、ライブならではの臨場感が形になったのではと思います。それが今年最後にリリースした、新しいアルバム、Window to the Worldです。




7月:
ノースキャロライナ州西部のアッシュビルの近くのミュージックキャンプ、Swannanoa Gatheringで初めてインストラクターとしてギターウィークで教えた経験は、この夏の最も思い出深い経験でした。音楽漬けの毎日で、毎日顔を合わせる生徒さんとも、また素晴らしいユニークな他のギターの先生とも交流でき自分自身が色々と逆に学んだ6日間でした。教える側としてどういうことができるか、これからどういう風に教えるか、またパフォーマーとして改善すべきとところはどういう箇所か、など考えさせてくれるきっかけを作ってくれました。





8月:
特に好きなコロラド州ですが、この写真のRed Stoneという町の近くの雰囲気、山、川の形状、思い出すだけでも戻りたくなります。川のすぐそばのステージで、静かな曲は川の音でやるのが難しい部分もありましたが、なんとも気持ちのいい場所でした。川の下流には天然の温泉があります。




9月:
去年に引き続き、この季節にカンザスへ戻りました。去年準優勝した、インターナショナルフィンガースタイルギターチャンピオンシップに再び挑みましたが、今年は4位止まりで残念でした。ライブとは違う緊張感で良い経験になりました。またこの近くに引っ越してきた友人を訪れることができたのも貴重な時間でした。ここもまた自分が育った日本の環境と真反対の広大な大地が広がる景色で、車を走らせながら色んな事に思いが巡りました。




10月:
ジョージア州のサバンナで初めてのライブをしました。アメリカで最も古い港町で当時の雰囲気が残され異国にいる感覚になります。演奏した教会もこの保存地域にあり、古く美しい建物で演奏にもぐっと集中することができました。また戻りたい町のひとつです。




11月:
カリフォルニア州南部のツアーの合間に、オクスナードという町に今は工場を構えるLarrivee Guitarsを訪れました。着くと創始者のJean Larrivee本人が出迎えてくれ2時間ほど時間を取ってくれ、ギターのことを熱く語りながら製作の過程を順に案内して見せてくれました。去年からライブで使っているギターでこういう風に作られているのかと分かり納得がいきました。今年は色んなビルダーが作った、様々なギターを弾く機会があり自分自身ギターの勉強になりましたし、これからも楽器のことを学びたいと思います。




12月:
自分の最も好きなライブ会場のひとつ、フロリダ州はペンサコーラという町のラジオ局が主催しているコンサートシリーズ、Radio Live。この町の歴史保存建物を会場として用いており、非常に雰囲気の良い上に、お客さんが半円形に座る設定で演奏していてとても気持ちの良いライブです。今回3回目ですが、また戻るのが今から楽しみです。




2019年最後に完成した5年ぶりのニューアルバム、Window to the World。今の自分のやっていることをそのまま形に出来たらという思いで作りました。

2019年2月10日日曜日

メリーランド、ヴァージニア、ウェストヴァージニア




カリフォルニアから寒い東海岸に戻り、メリーランド、ヴァージニア、ウェストヴァージニア州の3州で演奏してきました。

金曜日にNYCを抜け出すのはいつも苦労しますが(渋滞で)、この日もできる限り早めに出発したつもりも出るのに結構時間がかかってしまいました。南下する途中で演奏する予定の教会の人から電話があり、雪が積もっていて、今夜は止む予定だが、温度がかなり下がるため道路が凍結の可能性があるとのこと。もし出来れば明日の午後に延期できないかと。翌日のコンサートは割とそこから近かったので、オッケーと返答し、結局翌日2本ライブをやることに。ソロライブは気楽そうに見えても全て自分でやらないといけないためかなりエネルギーを使いますが、なんとか無事2本終えました。

2本目のライブの企画者リックはギターおたくで、いろんなジャンルのギタリストのインタービューを長年してきた人ですが、同時に珍しいギターのコレクターでもあります。サウンドチェックを終えて、僕のギターを見てくれるか?、と地下の部屋に案内されると楽器屋のように壁にずらりとヴィンテージギターがかかっていました。それを楽器屋の店員のように1本1本説明しながら渡してくれ弾かせてくれた楽しいひと時でした。もし気に入ったやつがあればライブで弾いてもいいよということだったので、その中の1本を気に入り、ライブでも3曲それで弾かせてもらいました。





Gibson L-OO (1931)


弾いたのはギブソンの1931年製のLOOというモデルで、マホガニーのなんとも柔らかい音が本当に気持ちが良かったです。これだけ時間が経つと音色もドライで自分のギターとのコントラストもお客さんも楽しんでくれたとのことでした。こういうタイプのギターは今まで弾いたことがなかったですが、外見のイメージと実際の音、引き心地は違うなと痛感しました。音や音楽を言葉にして説明することは可能ですが、本当の意味ではやはり出来ないのでしょう。

これまで子供の頃からギターを弾いてきましたが、自分のフォーカスはどちらかというと、楽器そのものというよりも音楽や曲作りであって、楽器は道具という感じできましたが、最近はいろんなところでギター好きな人たち、いろんなギターに出会う機会があり、ギターのこと、歴史、構造など、そういうことも自然と自分の中に入ってくる中、自分自身でももう少し深く学ぶのもいいなと思っています。


2019年1月19日土曜日

Finger Lakes


先週末はニューヨーク北部のFinger Lakesと呼ばれる地方に演奏へ。こんな季節にさらに寒いところへという感じですが、氷河が作り出した指の形をした長細い湖が並んでいる美しい場所です。夏はNYCなどから避暑地、アウトドアのためたくさん人が来て賑わいますが、冬はかなりの寒さです。

1日目は、Ithaca(イサカ)という町に着いてライブのプロモーションも兼ねて地元のラジオ局で、インタビューと演奏。早く着いたのでレコードコレクションを見せてもらいました。アメリカのラジオ局は大学がやっている場合が多いのですが(ここもそうでした)、最近はネット、メディアの影響もあり、学生たちもラジオ自体への興味が薄れてきているということでプログラムも減っているようで寂しいです。

ラジオが終わると隣町のTrumansburgへ。演奏した場所は、外から見るとパルテノン神殿を思わせる見た目で、聞くと古いギリシア風の元教会を改装して今はコンサート、ダンスなどのイベントに使っているそうです。なぜかこのエリアには、このようなギリシア風の柱をちょこちょこ見かけました。こういう教会は、天井が高く響きますが、時々響きすぎることもあり、全体の音響は良くても細かいところがぼやけてしまうことがあります。この場所は何とか大丈夫でした。お客さんはギタリスト率がとても高かったです。

演奏したTrumansburg Conservatory of Fine Arts


翌朝、ディレクターのGeorgeが近くにとてもきれいな滝があるからということで少し歩いてきました。この地方にはかつてアメリカ原住民がたくさん住んでおり、今でも場所の名前はネイティブアメリカンの名前をよく見かけます。そしてこの滝もかつて彼らの聖なる場所として崇められていたと聞き、実際にこの氷と雪の間から溢れ出て落ちる滝を見ているとそれも頷けるなと思いました。滝が高く、水が落ちて着地するまでの距離が長いため、途中で水が氷るのが見えました。






次の町はさらに北上しAuburnという町へ。この町のダウンタウンにあるシアターで、とても良い場所でした。スタッフが暖かく迎えてくれ、接してくれるとこちらもやる気が出ます。アコースティックギターのコンサートをやるサイズでちょうど良い大きさのシアターでした。

Auburn Public Theater


翌朝、同じシアターでギターのワークショップを教えました。高校生から年配まで10人ほどが参加し、それぞれ弾くスタイルも趣味も違いますが、まず自分の用いているDADGADチューニングをやってみようと提案し、それでみんなチューニングを変えてそこでコードや音の並びを紹介しました。初めての人も多かったですが楽しんでくれたようです。そのあとは自分の曲の作り方、ループのやり方などをデモンストレーションを交えてやりました。それにしてもみなさんギターが本当に好きで、それを見ているとこっちも嬉しくなったきます。

ワークショップ終了後、受講者のみんなと。



雪と氷のフィンガーレイクス地方でしたが、先週末は幸い雪も降らず無事演奏を終えて南下してニューヨークまで帰ってきました。

2019年1月3日木曜日

年の初めに

あけましておめでとうございます。

今年の年越しは今までにない、レコーディングスタジオで新しい年を迎えるという初めての経験でした。

大晦日の日にニューヨーク州北部の広大なアディロンダック山脈の真ん中にある小さな町キーンへ北上しました。NYCから北に進むにつれて少しずつ雪が増えてきます。そしてアディロンダックの入り口くらいから急に気温も下がり、大きな氷柱が目に入ってきました。

この地方には先月ライブで行き、その時のサウンド、PAを担当してくれたエリックが今回レコーディングしてくれました。ライブのサウンドチェックの際に機材のトラブルで音が出なかったのですが、彼が本当に冷静にオプションを事前に説明しながら対処してくれ、そのときその彼のスタンスは本当にエンジニアとして素晴らしいとすぐ思いました。

スタジオの近くには、雪、氷の山がそびえていました。そしてたくさん車が駐車してあるなと思ってみているとアイスクライマーたちが氷の崖を登っていました。地元の人の話ではここはアイスクライマーにとっての絶好の場所で、いろんなところから来るということでした。着いて車を降りると別世界に来た感じでした。


雪が凍ってつるつるでした。

こんな電話も通じない人里離れた場所で、寒い冬にレコーディングできて、ある意味隔離され集中できた2日間でした。前のアルバムをリリースしてからかなり時間が経ち、その間いろんな場所で書き溜めてきた12曲を今回やりました。



今回はこの3本のマイクでギターを録音。

アコースティックギターをレコーディングするには、いろんなマイクの可能性、セッティングがありますが、出来るだけ録音後にも、EQなどでそこまで音をいじらなくていいようにこの場でのギターの音を可能な限りバランス良くとることを試みました。先月のライブの際にエリックが、君のギターの繊細なところとダイナミクスをどれだけパッケージとしてキャプチャーできるか自分も試してみたいと言ってくれたことがこのプロジェクトの始まりでした。




自分にとって非常に思い入れのあるギターを弾きました。


大晦日の夜に10曲録り、エリックとHappy New Yearと言って別れ、自分はスタジオでその後録音したものを聞きなおしながら年が明けました。元旦は、残りの2曲とボーカルを中心にレコーディングしました。ここ数年間、とにかく様々な場所でひたすらライブをやってきました。その中で曲を作り自分の音楽に対する向き合い方も、出来るだけ正直なものを、飾らないものを音にしたいと少し変わってきた気もします。本当の目標は、そんなことすら、考えることすらしないくらいとにかくただ単純自分の音を自然に出すということですが。

とにかく今回無事録音も終わり、仕上がりがとても楽しみです。皆さんも楽しみに完成を待っていてください!


レコーディング終了してエンジニアのエリックと。